定款や登記簿に記載した目的に違反することはデメリットが大きい
株式会社の定款には事業目的(以下、単に目的)を記載する欄があり、そこには事業名やビジネスの内容が書かれてあります。
定款に書かれた目的は、会社が登記の手続をすることで、法務局が管理する商業登記簿の目的欄にそのまま転記されます。
商業登記簿に目的が書かれてあるということは、誰でも目的をみることができるということになります。
法律が会社に目的の明記と登記を義務づけているのは、その会社に関わる企業や人がその会社のことを知ることで取引の安定につながるからです。
ところが、会社が、定款や登記簿に記載された目的に書かれてない事業を行っても、罰則はありません。
だからといって目的に反する事業をすると、会社に大きなデメリットをもたらすことになるでしょう。
3つのデメリット
「大きなデメリットがもたらされるから」目的が変わったら定款を変更しなければならない、目的変更登記を行わなければならない、という考え方は正しくありません。
正しくは、「法律で義務づけられているので」正しい手続きを行う、となります。
それでもなお、経営者や総務担当者は、目的外事業をすることのデメリットを知っておいたほうがよいでしょう。
デメリットは大きく次の3つに分類されます。
- 1)取引先や金融機関の信用を失う
- 2)行政機関関連の業務が不利になる
- 3)目的を変更したのに目的変更登記をしないと罰則がある
1つずつみていきましょう。
1)取引先や銀行の信用を失う
設立間もないベンチャー企業が、大企業から仕事を受注できそうになったとします。そして大企業がベンチャー企業の与信調査に乗り出し、ベンチャー企業の登記事項証明書を取り寄せたところ、その仕事に類する目的が記載されていなかったとします。
このとき大企業の担当者は不審に思うでしょう。
コンプライアンスの観点から問題視するでしょうし、発注しようとしている仕事が正規の事業(目的)になっていないことに不安を感じるはずです。
同じことは銀行融資でも起きる可能性があります。
企業が新規事業の資金繰りのために銀行に融資を申し込んだところ、審査の段階で定款や登記事項証明書の目的欄にその新規事業が記載されていないことが判明すれば、通過できないでしょう。
銀行の担当者は、融資を申し込んできた企業の経営者に「定款を変更して、目的変更登記をするように」というかもしれません。このような助言を受けることは、経営者にとって「恥ずかしいこと」といえます。
2)行政機関関連の業務が不利になる
例えばある市が、土木工事の仕事を建設業者に発注することになったとします。そのとき入札が行われますが、入札できるのは基準を満たした企業だけです。その基準のなかには、当然ですが、定款と登記簿の目的欄に土木工事が記載されていることが含まれています。
行政機関は、企業に、企業の目的外の仕事を発注することはありません。
つまり目的変更登記をしないことは、行政関連のビジネスチャンスを失うことになりかねません。
3)目的を変更したのに目的変更登記をしないと罰則がある
会社が、定款や登記簿に記載された目的に書かれてない事業を行っても罰則はありませんが、定款の目的欄を変更したのに目的変更登記を行わないと、過料に処されます。
目的変更登記は、目的を変更した日から2週間以内に行なわなければなりません。
目的はどのように書けばよいのか
定款の目的欄と登記簿の目的欄は同じ内容になります。
事業内容を1つずつ箇条書きで書いていきます。
例えば株式会社日立製作所の定款の目的欄には次のように記載されています(*1)。
- 株式会社日立製作所の定款の目的欄(一部抜粋)
第2条(目的)当会社は、次の各号の事業を営むことを目的とする。- 1.電気機械器具の製造及び販売
- 2.産業機械器具の製造及び販売
- 3.車輛の製造及び販売
- 4.通信並びに電子機械器具の製造及び販売
- 5.照明並びに家庭用機械器具の製造及び販売
- 6.光学並びに医療機械器具の製造及び販売
- 7.計量器その他一般機械器具の製造及び販売
- 8.前各号に掲げた製品に関連する材料の製造及び販売
- 9.ソフトウェアの作成及び販売
- 10.マルチメディア関連の映像、ソフトウェア並びにデータの作成及び販売
(以下略)
日立製作所の目的は22項目ありますが、最初の10項目を転記しました。
ここから日立製作所は、電気機械器具を製造・販売する会社であることや、車輛の製造・販売をする会社であることがわかります。
ちなみに目的は、定款の第2条に置かれることが多い傾向にあります。
だからといって「なんでもかんでも」書いてよいわけではない
定款の変更や目的変更登記が「面倒そう」だからといって、会社の設立当初からなんでもかんでも目的欄に盛り込んでおけばよい、と考えるのは間違っています。
極端な例で考えてみましょう。
例えば、ある人がWebサイトを制作する会社を立ち上げたとします。当然、定款と登記簿には「Webサイトの制作、販売」等と記載するでしょう。ではこの人が、ガーデニングとバイクを趣味にしていて、「木材の輸入」や「バイクの販売」も会社の定款と登記簿に盛り込んだとします。
この会社の定款の目的欄はこのようになります。
定款
第2条(目的)当会社は、次の各号の事業を営むことを目的とする。
- 1.Webサイトの制作、販売
- 2.木材の輸入、販売
- 3.バイクの販売
この定款をみた人は、色々な事業をしている会社だと思うでしょう。しかし、1人で立ち上げた会社だったり、従業員が少ない会社だったりすると「Webサイト制作は片手間に行なっているのか」と疑うことがあるかもしれません。
では、次のような定款はどうでしょうか。
定款
第2条(目的)当会社は、次の各号の事業を営むことを目的とする。
- 1.飲食店の経営
- 2.食材の輸入、販売
- 3.食事の宅配事業
飲食店が食材の輸入事業を行っていれば、「海外の珍しい食材を食べられるかもしれない」と思ってもらえます。
食事の宅配事業も、飲食店が手掛けるのは理にかなっています。
仮に、まだ食材の輸入や食事の宅配をしていなくても、経営者が「将来やるかもしれない」と思っていれば、定款に記載するのは問題ありません。
新事業を始めるなら(目的を変更するなら)正規の手続きをしよう
定款の目的欄に記載されていない新規事業を始めるのであれば、正規の手続きを踏んでください。
それほど大きな手間ではありません。
- 1)定款の変更案をつくる
- 2)株主総会で変更した定款を決議してもらう
- 3)必要書類をそろえて法務局で目的変更登記をする
これだけです。
費用は、目的変更登記をするときに法務局に支払う登録免許税(30,000円)だけです。
目的変更登記の手続を司法書士事務所に依頼すると、さらに手数料を支払わなければなりませんが、経営者自身や総務担当者が手続きをすれば、そのお金を節約できます。
ただし、登記申請は法律行為になるので、自社で行うときは正しく書類を作成しなければなりません。そのコツを紹介します。
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自社で目的変更登記申請を行う場合は、スタビジ登記を利用することをおすすめします。
スタビジ登記を使えば、最短15分で必要な書類を正しくつくることができます。
総務担当者をしっかりサポートします。
スタビジ登記には次のような特長があります。
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さいごに~リスクを回避することは難しくない
目的を変更しているのに、または、目的にない事業をしているのに、定款も登記簿も変更しないことはコンプライアンスに抵触します。
しかも目的変更を放置することは、実際の損害を生みます。会社は信用を失い、資金繰りに失敗し、行政の仕事を受けられなくなり、罰則を受けるかもしれません。
定款を変えるだけ、変更登記を申請するだけなのに、そこまでのリスクを負う必要はまったくありません。しかもスタビジ登記を使えば、企業の総務担当者でも正確に書類を作成することができます。
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※登記申請には書類作成の方法や手段に関わらず、別途登録免許税が必要です。(弊社で発生する料金ではございません)
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