目的変更登記をするときに必要になる書類を紹介【そもそも目的とは、から解説】
定款や商業登記における「目的」は、一般用語としての目的とは少し異なります。
例えば一般的に会社の目的といった場合、社会貢献や雇用の安定、顧客へのソリューションの提供などを挙げるかもしれませんが、定款や登記における会社の目的は「事業目的」のことで、その会社が行う具体的な事業内容を指します。
そして定款や登記に記載されている目的(事業目的)とは異なる事業を始めたら、定款を変更したり変更登記をしたりしなければなりません。これも一般的な目的と大きく異なる点です。
この記事では、目的を変更したときに行う変更登記に必要な書類を紹介しながら、手続き全体を解説します。
そもそも目的とは何か、から説明していきます。
そもそも目的とは
これ以降、目的といった場合、定款と登記に書かれた目的のことを意味します。
定款の目的と登記の目的は同じ内容になります。
先ほど、目的とは事業目的であり具体的な事業内容のこと、と紹介しましたが、実際は何を書けばよいのでしょうか。
例えばソニーグループ株式会社の目的は次のようになっています(*1)。
- ソニーグループ株式会社の定款
第4条(目的)当会社は、次の事業を営むことを目的とする。- 1.電子・電気機械器具の製造、販売
- 2.医療機械器具、光学機械器具およびその他機械器具の製造、販売
- 3.音声・映像のソフトウェアの企画、制作、販売
- 4.コンピュータソフトウェアの企画、制作、販売
- 5.金属工業製品、化学工業製品および窯業製品の製造、販売
- 6.繊維製品、紙・木工品、日用雑貨品、食料品および玩具の製造、販売
- 7.輸送用機械器具および石油・石炭製品の製造、販売
- 8.不動産業、建設業および運輸倉庫業
- 9.出版業および印刷業
- 10.広告代理業、保険代理業、放送事業、旅行・スポーツ等のレジャー業およびその他のサービス業
- 11.金融業
- 12.電気通信事業法に基づく第一種および第二種電気通信事業
- 13.株式、債券等への投資に関する業務
- 14.前各号に附帯または関連する物品の製造、販売および輸出入業
- 15.前各号に関連する役務の提供
- 16.前各号の営業を行なう者に対する投資
- 17.前各号に附帯または関連する一切の業務
目的は箇条書きにして、文章は「製造、販売」や「~業」で締めくくればよいことがわかります。
これを読めば、ソニーが何をする会社であるかすぐにわかります。これが目的の意味になります。
電子や映像やコンピュータや金融などは、世間でおなじみのソニーの仕事ですが、化学、紙の製造、旅行業といった意外な事業も含まれています。
*1:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/stock/aoij.pdf
目的変更をする意義「だから変更登記が必要」
会社は、目的として挙げたことをします。そして目的として挙げていないことは、してはいけません。
しかし、目的に合致しないビジネスをして利益を挙げても罰せられることはありません。
それでは、目的外のことをしていても定款や登記を変更する必要はないのかというと、そうではありません。
もしある会社が目的以外のことを事業にしていたら、取引先や金融機関、行政機関の信用を失うでしょう。なぜなら、定款と登記に記載された目的は「うちの会社はこの仕事をして、これしかしません」と宣言しているのと同じだからです。
では、当面はやらないが、将来的にやるかもしれないことを、手当たり次第に定款と登記に記載してもよいのでしょうか。それも関係者の信用を失うことになるでしょう。
例えば、Webサイトを制作している中小企業の定款と登記の目的欄に「化学、紙の製造、旅行業」と書かれていたら、「何をしたい会社なのか」「Webサイト制作は片手間にやっているのか」と疑われるでしょう。
目的は本当にやることを書き、もしビジネスの多角化で目的外の仕事をするようになったら、正式に定款と登記を変更したほうがよいでしょう。
目的は絶対記載事項であり登記事項
目的は定款に必ず書かなければなりません。これを絶対記載事項といい、省略することはできません。
そして定款の絶対記載事項は登記すべき事項になるので、目的を変えたら変更登記が必要になります。
関連法規は以下のとおりです。
- 会社法第27条
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、または記録しなければならない。- 1.目的
- 2.商号
- 3.本店の所在地
- 4.設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 5.発起人の氏名または名称及び住所
- 商業登記法第47条第2項
設立の登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、次の書面を添付しなければならない。- 1.定款(以下略)
目的の変更の仕方:株主総会で定款の変更を決議する
変更登記の必要書類を紹介する前にもう1つ、目的の変更の仕方について解説します。
例えば、レストランを経営している会社が、特別な事情により一度だけ、店内で調理したハンバーグ弁当を宅配して、配達料金を含んだ代金を得たとします。料理の宅配事業がこの会社の目的に含まれていなくても、その一度だけならわざわざ定款を変更するまでもないかもしれません。
しかし、この会社が本格的に料理の宅配事業に乗り出す場合は、目的を追加する変更が必要になります。
経営者が新たな目的を定款に追加するには、株主の承認を得る必要があります。
株主は、株主総会で決議することで、目的の変更を承認します。
株主総会で決議されると初めて、料理の宅配事業を加えた定款案が正式な定款になります。
目的変更登記に必要な書類
株主総会で変更された定款が決議されると、目的変更登記を申請することができます。
目的変更登記に必要な書類は次の4種類になります。
- 1.申請書
- 2.株主総会議事録
- 3.委任状(司法書士事務所などに依頼する場合)
- 4.収入印紙貼付台紙
- 5.株主リスト
ここでは、株主リスト以外の4種類の書類について解説します。
1.申請書
目的変更登記に使う申請書の正式名称は「株式会社変更登記申請書(目的の変更)」といい、法務局の以下のサイトからダウンロードすることができます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor1-3
ここに変更内容を記載します。
2.株主総会議事録
申請書と一緒に、定款の変更を決議した株主総会の議事録を添付しなければなりません。
法務局はこの株主総会議事録で、目的の変更が正しい手続きで行なわれたことを確認します。
3.委任状
目的変更登記を司法書士事務所などに依頼する場合、委任状を添付する必要があります。
会社が自社で登記する場合は委任状ありません。
4.収入印紙貼付台紙:費用は登録免許税30,000円
目的変更登記をするには、登録免許税を納付する必要があります。この税金が実質的に手数料になります。
登録免許税の額は30,000円で、同じ額の収入印紙を購入し、収入印紙貼付台紙に貼って申請書に添付します。
目的変更登記の申請方法
目的変更登記の申請は、必要書類を登記所(法務局)に持参して提出するだけです。
また、登記所に書類一式を郵送することもできます。
法務局は、オンラインで商号変更登記を受け付けていて、以下のサイトで手続きをします。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html
管轄の法務局で手続きをする
目的変更登記は、会社の本店のある地域を管轄している法務局で行います。
期限は2週間以内
目的を変更したら、変更した日から2週間以内に登記をしなければなりません。
それを過ぎると罰則の対象になりますので、株主総会で議決されたらすぐに登記に着手できるように準備しておきましょう。
自社で手続きしてみては
登記に関わる手続きは司法書士事務所に依頼する会社が多いのですが、経営者本人や総務担当者が行うことができます。
自社で目的変更登記を行えば、司法書士事務所に支払う手数料を節約できます。ただし、登録免許税は自社で手続きしても必要になります。
そして自社で目的変更登記を行えば、法務スキルを社内に蓄積することができます。
法務局が絡む手続きは難しそうに感じ、苦手意識を持っている人は少なくありませんが、必要な書類を集めて受付に提出するだけで済みます。
ただ、目的変更登記は、会社にとってとても重要な法律行為になるので、期限内に正しい方法で行う必要があります。
正確に手続きするコツを紹介します。
必要書類はスタビジ登記でつくろう
自社で目的変更登記申請を行う場合は、スタビジ登記を利用することをおすすめします。
スタビジ登記を使えば、最短15分で必要な書類を正しくつくることができます。
総務担当者をしっかりサポートします。
スタビジ登記には次のような特長があります。
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さいごに~多角化したら登記を忘れずに
事業を多角化することは会社にとって有益です。従来の経営資源を使って新規事業を行えばコストをかけずに売上高を増やすことができますし、事業の柱が増えれば経営体力が増強されます。
ただし、新しい事業が定款に載っていない場合、定款を変えて2週間以内に目的変更登記を行わなければなりません。
遅延なく、そして正しく手続きしてください。
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※登記申請には書類作成の方法や手段に関わらず、別途登録免許税が必要です。(弊社で発生する料金ではございません)
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