商号変更するときの準備を徹底解説「社名を変えるときはここに注意して」
社名を変えようとしている経営者に、あえて次の質問をします。
その社名変更は本当に必要でしょうか
必要と判断したから社名を変える決断をしたわけですが、社名変更は大きなリスクを伴うので、慎重のうえにも慎重を重ねたほうがよいでしょう。
商業登記では、社名のことを商号と呼ぶので、ここからは社名の代わりに商号という用語を使います。
商号変更は、一歩間違えればこれまでの実績や評判、ブランドを傷つけることになります。
したがって、現行の商号によほどの不都合が発生していなければ、商号は変更しないほうが無難です。そして熟考の結果、新しい商号でなければ会社の将来を託すことができない、と判断できたら商号変更の準備に取りかかりましょう。
商号変更に伴うリスクを確認する
商号変更の準備で最初に着手すべきことは、リスクチェックです。
商号変更のメリットは、商号変更を検討している経営者ならいくつでも挙げられるはずです。そして新商号を考えていると気分が高揚し、そういうときはリスクを軽く見積もりがちです。
そのため冷静になる意味でも、商号変更がもたらすかもしれない不利益について向き合う必要があります。
商号変更リスクには次のようなものがあります。
- ステークホルダーの愛着を無視するリスク
- 会社が忘れられるリスク
- ブランドを毀損するリスク
- 過去を否定するリスク
- タイミングを逸すリスク
1つずつみていきましょう。
ステークホルダーの愛着を無視するリスク
商号は経営者だけのものではありません。従業員たちがその商号を誇りに思っているかもしれませんし、取引先もその商号に愛着を持って仕事を引き受けているかもしれません。
商号は、すべてのステークホルダーのものです。
ステークホルダーたちの大半が現在の商号に強い愛着を持っていたり、商号変更に違和感を持ったり反対したりしたら、商号変更のメリットは小さくなるでしょう。
会社が忘れられるリスク
商号が変わると、それを覚えてもらうまでに時間がかかります。古い商号は消え去っているので、新商号が浸透するまでの間、会社は忘れられてしまうかもしれません。
ブランドを毀損するリスク
商号が自社のブランディングに貢献している場合、商号変更はブランドを毀損する恐れがあります。
顧客のなかには、商号やロゴが好きで、その会社の製品を使い続けている人もいます。商号変更は、そうした顧客の「ブランド買い意欲」を低下させるかもしれません。
過去を否定するリスク
商号の多くは、創業者の思いが込められています。創業者が会社の経営から手を引いている場合、商号が変わると自分の経営を否定された気持ちになるかもしれません。
タイミングを逸すリスク
商号変更にメリットがあっても、今ではないほうがよいこともあります。
商号変更する時期を少し延期して、新商品や新サービスの発表に合わせてみてはいかがでしょうか。そうすることで、社運をかけた新商品という印象が強まりPR効果が高まります。
また、直近ですでに新商品や新サービスを発表してしまっていたら、商号変更は延期したほうがよいかもしれません。商号変更のインパクトが強すぎて、新商品がかすんでしまうからです。
商号変更は、変えるタイミングも重要です。
新商号の検討
商号変更のリスクを確認し、そのうえで新しい商号のほうが会社をより高く成長させることができると判断できたら、新商号の検討に入りましょう。
商号を変えたら、長期にわたってその名前で事業を進めることになるので、命名は慎重に行ってください。
法律上のNGワードを回避する
法律で、商号につけてはいけない名前が決められているので紹介します。新商号の候補の中に以下の条件に当てはまるものがあれば、いくらよい名前でも変更または除外しなければなりません。
- 株式会社は商号に「株式会社」と入れなければならない
- 他の会社や人と勘違いされる可能性がある言葉をつけることはできない
- その業種ではないのに、その業種を連想させる言葉をつけることはできない
- 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字、「・」「&」「 ’ 」「,」「-」「 .」で商号をつけなければならない
- 有名企業と同じ商号または類似した商号をつけることはできない
- 同一市区町村内に同じ商号があってもつけることはできるが、避けたほうがよい
新商号のコンセプトを考える
新商号は経営者のヒラメキでつけてもよいのですが、やはりコンセプトを決めて、それに沿った名前のほうがよいでしょう。
なぜなら、間違った商号をつけてしまうと、後悔しても後悔しきれないからです。
自動車メーカーの本田技研工業株式会社の創業者、本田宗一郎氏は、自分の名前を商号につけたことを後悔しています。その理由は、個人企業や同族会社と思われてしまうからです。本田宗一郎氏は自分の息子を後継の社長にしなかったほど人材の多様性を重視していたので、この後悔は相当強かったと想像します。ちなみに本田宗一郎氏は、ソニーという商号を高く評価していました。
新商号のコンセプトは会社によってそれぞれですが、例えば次のようなものがあります。
事業内容をイメージさせる商号
トヨタ自動車株式会社という商号は、一発で自動車をつくっている会社であるとわかります。
事業内容を限定しない商号
旭硝子株式会社はAGC株式会社に商号を変えました。ここには「ガラス以外の素材も扱っている」というメッセージが込められています。
また回転寿司の株式会社スシローグローバルホールディングスは、スシロー以外の業態でもグローバル展開するという意欲を示すため、株式会社FOOD & LIFE COMPANIESに変更しました。
認知度が高い商号
松下電器産業株式会社がパナソニック株式会社に変更したのは、パナソニックという名称のほうが、認知度が高かったからです。
最も売れている商品・サービス名と同じ名前の商号
ファミリーレストラン・ロイヤルホストを運営している会社は、ロイヤルホールディングス株式会社といいます。三菱UFJ銀行を運営している会社は、株式会社三菱UFJ銀行といいます。朝日新聞を発行している会社は、株式会社朝日新聞社といいます。
このように、自社で最も売れている商品やサービスの名前を商号と同じにすると、どちらも消費者に浸透しやすくなります。
経営者たちの気持ちを込めた商号
ユニクロを運営する会社は、株式会社ファーストリテイリングといいます。もしかしたら「株式会社ユニクロ」のほうが商号を浸透させやすいかもしれませんが、現行の商号には創業者の想いが詰まっています。ファーストは「素早く」という意味で、リテイリングは「小売業」という意味です。
新しい商号が決まったあとにする準備
経営者が新しい商号を決めても、すぐにそれを使うことはできません。法律的かつ社会的に新商号を確定させなければなりません。
そのために必要な準備は大きく3つあります。
- 1:定款の変更
- 2:株主総会で定款変更を議決する
- 3:商号変更登記の申請
商号は定款に記載するので、商号を変えたら定款を変えなければなりません(1)。
定款を変えるには、株主総会で議決してもらわなければなりません(2)。
ここまでは社内手続きになります。
公的な手続きとしては、登記が必要になります。法務局に行って、商号変更登記を申請します(3)。商号変更登記申請には、申請書の他に、株式総会の議事録などが必要になります。
1、2、3で法律的な商号変更の手続きは完了しますが、さらに社会的な手続きが必要になります。
それが次のようなものがあります。
- 商号変更したときの「やることリスト」
- 銀行や役所などへの変更手続き
- 取引先や顧客などに知らせる
- 看板を変える
- 封筒や請求書や名刺の商号を変える
- 会社の実印を変える
- 新商号をPRする広告を流す
- 公式サイトを変える
- 社用メールアカウントを変える
- 子会社の商号も変更する
大変な作業量になりますがどれも重要なので、1つひとつ確実に片づけていくことになります。
スタビジ登記を使えば商号変更登記が自社でできる
商号変更登記の申請は、自社でもできます。経営者や総務担当者が申請すれば、司法書士事務所に依頼する費用を浮かすことができ、事務経費のコストダウンにつながります。
ただ、登記は正確さが求められるので、自社で商号変更登記申請を行う場合は、スタビジ登記を利用することをおすすめします。
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さいごに~後悔しないように
時代の流れやビジネスの潮流、会社の成長具合などによって、現在の商号が自社にそぐわなくなることがあります。
経営者はそのとき商号変更を考えるかもしれませんが、しかし、そのまま時間が経過すると、元々の商号が再び新時代にマッチしてくるようになるかもしれません。
商号は変更がきくだけに、変更するかどうかの判断に迷います。
商号変更をするメリットとデメリットを比べて、「メリットのほうが大きい、後悔することはない」と判断できたら、準備に取りかかってください。
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