商号変更(社名変更)する意義を考える【基礎知識と変更後の手続き解説】
商号とは商業登記の専門用語で、一般的には社名のことを指します。この記事では社名の意味で、商号という言葉を使います。
会社を設立したころの事業と現在のビジネスの間に大きなギャップが生まれていると、これまでの商号では、社員や顧客や取引先は、そして経営者自身も、違和感を覚えるでしょう。
そのとき商号を変更すると、時代にマッチさせることができます。
しかし同時に「長年使ってきた商号を捨てるのは惜しい」と感じるはずです。
その感覚は大切で、商号変更にはよい面と悪い面があるので、メリットが大きいと判断できたときに実施しましょう。
この記事では、商号や商号変更の意義を考えたうえで、商号変更をしたあとの手続きについて解説します。商号変更をすると登記などの手続きが「山ほど」出てきます。
商号が持つ意味
旭硝子株式会社は2018年に、商号をAGC株式会社に変更しました(*1)。
旭硝子と聞けば、同社を知らない人でも、一発でガラスメーカーをイメージできると思います。同社は創業時から現在までガラスをつくり続けているので、旭硝子という商号は同社にピッタリでした。
しかし同社は、今はガラスだけでなく、電子、化学品、セラミックなどさまざまな素材を扱っています。そのため旭硝子という商号では、例えば「ガラスメーカーがなぜ電子素材をつくっているのか」といった誤解を与えてしまいました(*2)。
それで商号変更に先立つ2007年から、国内外の関係会社の商号にAGCを使っていました。そして2018年にとうとう本体もAGC株式会社にしたわけです。
この事例から、商号には次のような意味があることがわかります。
- 商号が持つ意味
- 商号は事業内容を言い表す
このことを、商号は事業内容を限定してしまう、と言い換えることもできます。
企業が大きくなって事業内容が多岐にわたるようになると、事業内容を特定する商号は窮屈になります。
松下電器産業株式会社は2008年にパナソニック株式会社に商号変更しました。
この商号変更にも「電器だけの会社ではない」という想いが込められています。さらに、パナソニックという、いわば通称が力を持ちすぎしまった事情もあります。商号をパナソニックにしたほうが、消費者はしっくりきます。
パナソニックの事例から、商号には次の意味も含まれることがわかります。
- 商号が持つ意味
- 認知度や好感度を高めることができる
パナソニックの逆をいっている会社もあります。
株式会社ファーストリテイリングを知らない人でも、ユニクロは知っているでしょう。株式会社ファーストリテイリングはユニクロを運営している会社ですが、名称の知名度は圧倒的にユニクロのほうが高いといえます。
株式会社ユニクロに商号変更したほうがよいと思えるかもしれませんが、ファーストには「素早く」という意味が、リテイリングには「小売業」という意味があります。つまり、ファーストリテイリングからは「ユニクロだけの会社ではない」「人々が求めるものを素早く売っていく」というメッセージを読み取ることができます。
回転寿司スシローを展開する、株式会社スシローグローバルホールディングスは2021年に、商号を株式会社FOOD & LIFE COMPANIESに変更しました(*3)。スシローという知名度が高い名称を、あえて商号から外した例になります。
こちらも「回転寿司だけではない」「グローバル展開するのに世界で通用する商号が必要だった」という意味があります。
このことから、商号には次のような意味もあります。
商号が持つ意味
経営者たちの気持ちを込めることができる
*1:https://www.agc.com/company/history/index.html
商号変更のメリットとデメリット「利点が多いときに実施を」
商号変更には必ずメリットとデメリットの両方が伴います。したがって経営者は、商号を変える利点のほうが多いと判断できたときに、商号変更をしましょう。
商号変更のメリットは次のとおりで、商号の意味に通じるものです。
- 商号変更のメリット
- 事業内容を言い表すことができる
- 事業内容を限定させないようにできる
- 認知度や好感度を高めることができる
- 経営者たちの気持ちを込めることができる
- サービス名と一致させることができる
- ブランドを確立できる
- 新鮮、格好いい
- 生まれ変わったことをPRできる
商号変更のデメリットは次のとおりです。
- 商号変更のデメリット
- 新商号が世間に浸透するまで知名度が低迷する
- 親しまれない
- コストがかかる
- 商号とともに会社の歴史を捨てたイメージがつきまとう
- 何をやっている会社なのかわからなくなる
- ブランドが毀損される
商号を変更したあとの手続きは4つ
経営者が商号を変えることを決定したら、やることは大きく次の4つあります。
- 1:定款の変更
- 2:株主総会で定款変更を議決する
- 3:商号変更登記の申請
- 4:細々しているが重要なこと
1つずつ解説します。
1:定款の変更
会社法第26条は株式会社を設立する発起人(経営者、創業者など)に、定款の作成を義務づけています。そして同第27条は、定款には次の内容を盛り込むよう定めています(*4)。
- 定款に記載しなければならない事項(会社法第27条)
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 出資する財産の価額または最低額
- 発起人の氏名、名称、住所
そのため、商号を変更するには定款を変更しなければなりません。
*4:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
2:株主総会で定款変更を議決する
定款を変更するには、株主の承認を得なければなりません。株主の承認は、株主総会による議決になります。
したがって定款の変更は、株主総会の議決を経なければ有効になりません。
株主総会では常に議事録を作成すると思いますが、このときの議事録は商号変更登記のときに使うのでとても重要です。
3:商号変更登記の申請
商号変更が株主によって承認されたら、次は役所での手続きになります。
法務局の登記所で、商号変更の登記申請を行います。
企業の多くは、商号変更登記を司法書士事務所に依頼すると思いますが、もちろん自社で行うこともできます。必要な書類をそろえて、登記所(法務局)に提出するだけです。
必要書類は次のとおりです。
商号変更登記の申請に必要な書類
申請書
正式名称は「株式会社変更登記申請書(商号の変更)」といい、法務局の以下のURLからダウンロードできます
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
株主総会の議事録
株主リスト
印鑑(改印)届出書
商号が変わると会社の実印も新しくする必要があるので、この印鑑(改印)届出書で手続きをします
収入印紙貼付台紙(登録免許税の支払い手続き)
登録免許税は、登記申請の手数料のようなものです。
商号変更登記の登録免許税の税額は30,000円で、同額の収入印紙を収入印紙貼付台紙に貼りつけて提出します
商号変更登記申請は、これらを登記所に提出する「だけ」ですが、これらの書類を用意することは簡単ではありません。また、商業登記は法律行為であり、正確さが求められます。
そこで、商号変更登記の書類づくりのコツについて、後段で詳しく解説します。
4:細々しているが重要なこと
商号が変わると、あらゆるものが変わります。それらの1つひとつは細々したことですが、どれも重要です。
手抜かりがあると「だらしのない会社」と思われてしまうかもしれませんし、かえって会社のイメージを下げてしまうかもしれません。それでは商号を変更した意味がなくなってしまいます。
細々したことこそ、手抜かりなく行う必要があります。
- 商号変更したときの「やることリスト」
- 銀行や役所などへの変更手続き
- 取引先や顧客などに知らせる
- 看板を変える
- 封筒や請求書や名刺の商号を変える
- 会社の実印を変える
- 新商号をPRする広告を流す
- 公式サイトを変える
- 社用メールアカウントを変える
- 子会社の商号も変更する
経営者は、総務や法務の担当者と打ち合わせをして、このような「やることリスト」を作成して、担当者を決めて、1つひとつ確実に片づけていってください。
またほとんどに費用がかかるので、コスト計算も必要になります。
必要書類はスタビジ登記でつくろう
商号変更登記の申請は、自社でもできます。経営者や総務担当者が申請すれば、司法書士事務所に依頼する費用を浮かすことができ、事務経費のコストダウンにつながります。
ただ、登記は正確さが求められるので、自社で商号変更登記申請を行う場合は、スタビジ登記を利用することをおすすめします。
スタビジ登記を使えば、最短15分で必要な書類を正しくつくることができます。
総務担当者をしっかりサポートします。
スタビジ登記には次のような特長があります。
- 司法書士が監修している
- 実績が豊富で、利用社数は1,000社以上に達しました(2021年5月時点)
- 費用は税込 10,000円
- 無料で印鑑をつくるキャンペーンを実施中
さいごに~真剣な議論を
商号には、いろいろなものがのっています。そのいろいろなものは、会社が発展するほど、会社の歴史が長くなるほど、多くなり重くなります。
そのため、現行の商号ではいろいろなものを支えきれなくなることがあります。そのとき商号を変えると、会社を刷新できるかもしれません。
しかし、刷新には常に廃棄が伴います。商号を変えても、失うものが出てくるはずです。
商号変更によって自社は何を得て何を失うのか、社内で徹底的に議論したほうがよいでしょう。
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